activitiesNeo・ミーナ回想記 2018

32【泣かせた記憶……大切なガン友を。】

「私の乳がんは治る」そう思い込んでいたので基本的には普段と変わらず元気でした。

むしろ、明るく生き生きとしていたかもしれません。
そんな姿が「なんだぁ~ 心配して損した。」「本人は、全く落ち込んで無いんだ。」と思われ、そのせいで度々嫌な思いをしてしまう羽目になりました。

 

 

勿論、死に至るかもしれない状況で痛みが続く毎日の中なのでで、心の奥底に恐怖心も有りました。
でも周りの人に心配かけたくなく悟られたくなかったので、そのような素振りは見せませんでした。しかも「マイナスの事を少しでも思うと、それが現実化してしまう。」と思っていましたので。

 

 

そんなある日、10年以上お世話になっている仕事で尊敬している60代のダンディーな男性が見舞いに来た時の話です。
その男性は、豪華な花束と共に信じられないセクハラの言葉を残して帰っていきました。
私は誰にも言えない会話のやり取りを黙っているのに耐えられなくなってしまいました。
この気持ちを共有出来るのは、雪の女王しかいない。でも、この言葉を聞いた彼女も傷付くと予想は出来たのですが、迷った挙句私はショックのあまり打ち明けてしまいました。

 

 

するとその言葉を聞いたとたん雪の女王は
「なんて 酷い事を……」
そういうと、両手で顔を覆って泣き出してしまいました。
私は慰めようとしましたが、言葉をかけようとした時涙が出てきて、2人でしばらくの間、泣き続けてしまいました。

 

 

その病院には『病衣』は無く、私服で見舞い男性の対応をしました。抗ガン剤をしていないので髪も抜けていませんし、痩せもせず元気な姿だったので、『がん患者』という感覚を失わせたのかもしれません。

 

 

私は、とめどなく流れ出る涙によって、頭の中が綺麗に洗い流され自分の気持ちが浮かび上がり、心の中を冷静に見つめる事が出来ました。【なぜ、そんなに涙が止まらなかったのか】を。それは、失いかけている愛しい胸。脅かされている命。そして孤独という存在に改めて気づかされた、そう感じていました。

 

声なき声の代弁者

北里ミーナ